一尾のさかな


   一尾のさかな

夏の終わりの
かぶとむしのよう
ひっしとつかまっている
いま

みずからを宣言し
のぼってゆく
大魚の
ひかりを浴びている

大魚によってのこされた
平らかな場に
立ち
ぬかるんだ
土のにおいを
いっぱいに吸う

だいじょうぶ ここには
ひかりの束がある

粒子の帯をつくる
ひとつ
またたき
点として在る
可能性

そうして
泳いでゆくのだね


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