さびしさについて



  さびしさについて

夜 駅の南側にある古びたビジネスホテルの
狭いツインの部屋で
銀の粒に焼きつけられたきみの
恋人との
暮らしの記憶を見せてもらった

わたしときみは ともに
寝床をもたない
幽霊として向かいあい
うす灰色の暗がりで
テレビのどっと笑う
点滅に
埋められている

ぜんぶ終わって
ひとりになって
あの子の骨を見ていたら
たまらなくなってたべちゃったの
ドロップみたいに
欠片をぜんぶ

泣いていても
笑っていても
目と鼻と口はくしゃくしゃで
やせっぽちな乳房を
晒しあって
抱きあって
みたけれど何になったか

崩れていってしまう
きみを 
きみの喪失を
正しく捉えられないまま
かたわらに
横たわって

きみはうつぶせに
わたしはあおむけに

ビニール傘の向こうを
滑り落ちてゆく
雨粒
みたいなひとりごとに打たれながら
刻々と
夜明けを待って
すこしだけ眠った

人気の投稿